鼻腔を掠めていく香りに、グッと心が掴まれる。


これからの行為を、自ら手繰り寄せるかのように・・・



グイッ――

虚ろ気にしていると、社長に手首を掴まれた。


ハッと我に返って、自分の手をまじまじと見てしまう私。



「・・・外せ――」

「ッ――!」


清涼な声が、遥か頭上から聞こえた。



その言葉が示すモノは、右手薬指のリング――



後藤社長から贈られた、手錠紛いのモノであって。


薬指に填ったソレは、神々しく輝きを放っている。



だけれど、日陰の女である私にとっては。


あまりにも惶恐(コウキョウ)とさせる、不釣合いな代物。



そのうえ私の意識を留めさせる、後藤社長の手綱でもあって。


外すコトなど、許されないよ・・・




すると薬指から、スッとリングが抜かれてしまう。



コトン――

社長のデスクに、華奢なリングが置かれた。




「これから蘭は、俺のモノだろう?」


「っ・・・」


その眼差しと言葉で、私を一気に火照らせていく――