そのまま歩を進めて、私へと近づいてくる社長。


キョリが近づく度に、鼓動まで高鳴っていく。




「っ――」


だけれど、私の内心では・・・


ドキドキする心臓とは裏腹に、切なさが募り出す。



これが…、最後のカンケイであって・・・


このあとには、別離と後藤社長との今後が構えている。



始まりがあれば終わりも、必ず来るけれど。


拓海との関係が、これを機に途切れてしまう。



その密事が、これから始まるなんて――




ブラウンの瞳だけを捉えて、ただ待ち続ける私。


キョリを縮めるコトなど、許されないもの。



近づきたくても、近づけなくて・・・



近づけたとしても、離れられないから・・・




社長が歩く度、ホワイトムスクの香りが私を惑わせる。


爽やかなようでいて、奥に秘めたる魅力。



“今”は私だけが知る、社長の秘密と香り――




「っ・・・」



それは甘くて、愛しくも、ほろ苦いエッセンスなの。