態々、家の前で待っている――



そんな…、ウソでしょ・・・?



秘書になって、初めての事態に驚かされる。



それほど私は、社長の気分を害したの?


色々と浮かぶ考えに、身体が強張り始めてきた。




秘書として、妾としても・・・



貴方との時間に、終止符を打つトキの訪れ――


再び別離が目前に迫り、怖くなってしまう。



ずっと、離れたくなんてナイのに。



薬指で輝くリングが、ソレを許さない。




今度こそは、もう逃げられナイと・・・




「っ・・・」


震える身体を宥めるように、深呼吸をしていると。




「蘭、早くしなさい!」


「…っ、ハイ・・・」


母の焦りにも似た声が、ドア越しに響いてきて。




カチャ――

早まる心音のまま、急いで自室のドアを開けた。