アノ指先が触れるのを、身体は待ち構えていた。



鼓膜を震わす声で囁かれたくて、仕方が無かった。



ずっと、ずっと繋がっていたかった。



今さら…、どうしようもナイのにね――?





「よし…、出来た――」


全身鏡の前で、ムリヤリ引き攣る口元を動かす私。



再び着直したのは、いつものパンツスーツ。


そのスーツに合わせて、ヘアもアップスタイル。



社長に求められるモノは、コレだから・・・



最後くらい、お洒落したかったな――




トントン――

バックに手を掛けた時、自室のドアをノックされた。



「はいー?」


「蘭、早くしなさい!

貴方が待たせるなんて、どういうコト!?

拓海君が、玄関前で待ってるじゃない!」



「え・・・」


母の憤慨した声に、再び心が波打ち立った。




社長が…、どうしてなの・・・?