そんな逸材の秘書を、私が務めているのだ。



・・・すべては、彼がきっかけだけれど――




そのまま彼に気づかれないよう、今日のスタイルを観察する。




シックな、ネイビーのストライプスーツ。


ネクタイは水色を合わせ、爽やかさも忘れないのがポイント。




今だけ…、この瞬間だけ・・・・・



唯一彼に魅入るコトが許される、僅かなトキだから――







「蘭、今日の予定は?」

すると前方を見据えたままで、無表情に尋ねられる。



「あ、はい・・・

本日は、TS商事の後藤社長様との会食が――」


構えていた私は、手帳を開いてスケジュールを伝えていく。



「っ・・・」


ダメ、仕事だもの・・・、しっかりしなきゃ――




未だに“蘭”と、呼んでくれる社長に対して。



儚い想いを抱いたままの私を乗せ、今日も会社へと向かう――