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「拓郎君!拓郎君!」

ツインテの小柄な少女が話しかけていた。僕に。

近藤拓郎に話しかけるやつなんてめったにいないんじゃなかったのか?

「拓郎君ってば!」

ああ、うるさい。
お前に構っている暇はないんだ。どいてくれ。

これ、本物の近藤拓郎っぽくないか?

もちろん僕は本物の近藤拓郎とは違うわけでこんなこと微塵も思っていない。むしろ逆だ。

「ねぇ、反応してよ―」

スカートを揺らしながら僕の周りをぴょんぴょん跳ねる。

やばい、可愛い。

今すぐ満面の笑みで優しく応答してやりたいくらいだ。

命が掛かっているのでやらないが。

彼女の周りの空気は綺麗になっているような気がする。

内蔵式の空気清浄機か?

進んでるなぁ。

いや、綺麗にしてるだけじゃない。

なんか良い匂いがする。

可愛い。

なんか目、キラキラしてるし。

「返事してくれなきゃストーキングしちゃうぞぉ。」

いや、むしろして欲しいです。

どんなシチュエーションだよ、これ。

ああ!もう、良いじゃないか。

返事してしまいなよ。

しかし、天秤のもう一方に乗っているのが死であれば、代償が大き過ぎるわけで。

「ねぇってばぁ」

僕の前で顔をぷくっと膨らませる。

その時僕の中の何かが大きく傾いた。

あ、死んでもいいや。

彼女に向かって手を伸ばそうとした。しかし、その時、授業再開のチャイムが鳴った。

身体がびくっとなる。

何をしようとしていたんだ、僕は。

チャイムの音で僕の命は繋がれた。