コピー

部屋の中央では老人が、机に内蔵されているらしいコンピュータを操作しており、机の上では様々な模様の変化が展開されていた。

どうやらこの老人が校長らしい。

山口先生はやはり校長ではなかったようだ。

イメージ通りの校長が出て来て少し安心した。

待てよ。
この老人、どこかで見たような…

そうだ、あの老人だ。
謎の言葉を残して去って行ったあの老人。

山口先生は僕の話した老人をこの校長だと思って、僕をここに連れて来たのだろうから、山口先生の予想は見事的中したというわけだ。

老人は僕たちの来訪に気付くと作業をやめ、口を開いた。

「そろそろ、来る頃だと思っていましたよ。」

顔に似合わず柔和な声で言った。

山口先生が僕に目配せをして来る。

少しして意味を理解した僕は
「ああ、はい…」
と答えた。

言葉で言って欲しい。

「校長は近藤拓郎のことをご存じなのですか?」

「近藤拓郎からメールが届きました。
そこにいるのが『近藤拓郎』ではないということくらいは分かっています。
近藤がコピーする作業を少し誤ったというのも。」

「今日、昼に私の研究室を訪れましたよね。」

「メールの真偽を確かめておきたかったのですよ。
メールを貰って、急いであなたの研究室へ向かいました。
だがあなたは授業でおられない。
私はそれからしなくてはならない作業があったのであなたの帰りを待つわけにも行きませんでした。
そこで『その子』に会って確かめることにしたのです。
反応からメールの内容が本当だったということが分かりました。」

「では、校長の残した意味深な言葉は?」

「あれは正体がバレたら危険だから勝手な行動は慎むようにという警告です。
後、近藤拓郎の件を知っているということを匂わせ、かつ少し不可解な言葉を残した方が、あなた方がここに確認しに来る可能性が上がると思ったからと言うのもあります。」

校長は僕たちがここに来ることを見越していたらしい。

だから僕たちが来たとき、『そろそろ、来る頃だと思っていたました。』と言ったのだ。

だが、少し違和感を覚えた。

成功するかどうか…