つらら飴

 部屋に入って服を脱ぐ。
 悴む指先ひび割れる。
 震える歯音が右脳に籠もる。
 雪を含んだ靴下捨てる。
 紅い小指は縮こまる。
 お風呂に入ろう小指は言う。
 私は小指を揉みつつく。
 
 湯溜める間シャワーで繋ぐ。
 軽い頭が清々しい。
 髪切ったのは大正解。
 そう自分に言い聞かす。
 曇る鏡に指平当てる。
 左右に動かし顔を見る。
 朱染まり頬はまだ寒い。
 一重の坂に水滴垂れる。
 二重の歪さ憧れる。
 奥歯近くに一つの乳歯。
 虫歯も無くて少し自慢。
 だけど振られちゃ無意味なだけで。
 歯並び良くても意味が無い。
 あなたがいないなら意味が無い。

 体育座りで湯船に浸かる。
 どこかの温泉粉入れる。
 多分いい香りだと思うけど。
 鼻の感覚水溜まり。
 私は俯く水面に。
 無意味に息止め眼を瞑る。
 三十秒の無呼吸自虐。
 そして二酸化炭素を廃棄して。
 肺に酸素を送り吸う。
 ゆっくり腰を下にずらして。
 目だけ出して潜望鏡。
 何かが変わる訳無いけれど。
 何もしないと泣き出しそう。
 耳に侵入温泉湯。
 鈍い聴覚心地良い。
 体の中まで温めて。