絢香のアパートは部屋中に芳香剤やら線香やら...炭やらおかれていた。
まるでこの血生臭い臭いから逃れるように。
絢香に導かれソファーに座った私にいきなりめまいが襲ってきた。
「うゥ..」
頭を抱えてうつむくと次の瞬間..頭の中でかわいらしい犬を抱える絢香がいた。絢香はその犬を笑顔で撫でていた。そしてベランダで外を見ていた。
でもそれまで微笑んでいた絢香は一変して犬を睨みつけるとベランダから放り投げてしまった。ここは6階..絢香は投げられた犬を見つめていた。
これが一瞬にして頭の中を駆け巡った。
「大丈夫?!」
絢香の声にハッと我に返った。
「大丈夫..ちょっとめまいがしただけ」
目をベランダにやるとさっき見えた映像と同じカーテンがひらひらしていた。
「あ..」
「どうしたの??」
棚の上に愛犬と絢香が写っていた。
その愛犬はさっきの犬に間違いなかった。
「犬..飼ってたの??」
「ぇ..ま..まぁね....」
「見当たらないけど」
絢香は動揺した後に
「親戚に預けてるよ」
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