「これ、ですか?」

低くて、心地のいい声だった。

「あ…ありがとうございます。」

「いえ。こちらこそ、

 すみませんでした。
 
 脚立、もう少し

 増やしておきますね。」

見ると、彼は水色の

エプロンをしており、

この図書館の従業員だと

すぐに分かった。

「じゃぁ、僕はこれで。」

愛はじぃっとその後ろ姿を

眺めていた。

派手すぎず、

落ちつきのある茶色に

染まった綺麗な髪。

パッと見で180cmくらい

ありそうな身長。

善彦にも劣らない、

芸能人でもおかしくない、

それくらい

カッコよかった。

しばらくボーッとした後、

愛はブンブンと首を振った。

ちゃんとした恋人が

いるにも関わらず、

他の男に目移りするようでは、

善彦の恋人として、

恥ずかしいと思い、

彼女は本を借りると

足早に図書館を出た。