―――翌日

「愛ちゃん、ちょっと。」

声をかけたのは、

先輩の崎本美緒だった。

「どうかしたんですか?」

「実はこの書類、

 副社長のところに

 持っていかなきゃ

 いけないんだけど…。
 
 今ピリピリしてるだろうし、

 愛ちゃんが行ってくれたら

 助かるな…なんて。」

それが先輩の気遣いだと

察した愛は、

素直に承諾した。




善彦は今、

会議室にいるという風に

教えてもらった愛は

エレベーターを降り、

会議室に向かっていた。

―――コンコン…

「どうぞ。」

それはまさしく、

善彦の声だった。

「愛…や、永島さん。」

なぜ彼がいいなおしたのか、と

不思議に思っていると、

こんにちは、と

女性社員が現れた。

「どうかしたんですか?」

「あ、いや…これ。

 副社長に提出する書類を

 預かってきたんです。」

「あぁ、そうなんですか?

 わかりました。

 受け取っておきます。」