ラウラの亡骸は、キャンプ場で命を落とした他の人達と一緒の場所に埋葬した。

 いくつも連なる小さな山と、その上に立つ木で作られた十字架。

 ここがキャンプ場だったなど、思いも出来ないほど何もかも無くなってしまった場所。何も知らずにここへ立ち寄るであろう次の行商人達の為に、小さな置き手紙を刻んで行く事にした。

 この地でたくさんの血が流れた事。もうこの場所が安全ではない事。モンスターの特徴や、そのモンスターがどう危険なのかという事。

 恐らく、次に立ち寄る事があっても、もうこの地にキャンプ場は無いだろう。

 ウルは、ラウラの眠る十字架の前で片膝をついた。

「ラウラ、付いてきてくれて有り難うな。
 守れなくて、すまなかった……」

 自分だけに聞こえる程度の小さな声で呟くと、十字架の前に、唯一残っていた銀矢を一本突き立てて立ち上がる。

「行こうか」

 後ろでじっと待っていたヴァルザックに歩み寄りながら声をかけた。

 澄み渡る青空に同化するように、大きく翼を広げて飛び立つドラゴン。

 ─さようなら……。

 ドラゴンの背中から、遠ざかっていく大地を見下ろしながら、ウルは小さく心の中で呟いた。

 しばらく続く、無言の飛行。

 何を話して良いのか分からないウルと、そんなウルを気遣って声をかけることが出来ないヴァルザック。

 その沈黙を破ったのは、ウルだった。

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