もう空には星が瞬き、大地は闇に包まれている。
 虫の声すらも聞こえない、静寂。

「……ラウラだ…」

 ポツリと苦しそうに呟いたヴァルザックの声が大きく聞こえた。

「え?」

 突然の言葉に何の事なのか理解出来ず、問い返すウル。

「この傷付けたの、ラウラだ…」

 少しだけ声を大きくして繰り返したヴァルザックの言葉に、思わず絶句する。

「さっきの、あの鳥……。キャンプ場の至る所にいやがった……。あの鳥に触れた奴等が、殺し合いをしていたんだ…」

 もう、止められない……。

 ウルがヴァルザックの言葉を理解するまでの僅かな時間、沈黙が落ちる。

 ─殺し合いをしていた? 商人達が?
 そこに、ラウラを行かせたのか……?

 ラウラがヴァルザックに傷を負わせたと言うことは……──。

「まさか……。
 ……まさか、ラウラも……?」

 沈黙を破ったウルの声すら、その沈黙に飲まれてしまいそうな程に掠れている。

 静かに、ゆっくり頷くヴァルザックを見て、ウルの腕から力が抜ける。

「…ラウラは……誰かを、殺したのか?」

 吐息のように漏れる空気を必死で「声」に変えながら、ウルはヴァルザックに問いかけた。

 ヴァルザックは、ただ瞳を閉じているだけで、答えない。
 だが、それこそが答えだと言うことに、ウルは気づいていた。

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