「……ッ!」

 小さい呻きが、ウルの口から洩れる。


 ドズッ!


 ウルが蹲ると同時にヴァルザックの尻尾がウルの頭上を切り、目の前に迫ったオークを吹き飛ばす。

「ウルッ!」

 ラウラがウルに駆け寄ると、支えるように立ち上がらせて、ヴァルザックの伸ばす手の上に乗り込んだ。

 それを確認したヴァルザックは、飛びかかってくるオーク達に威嚇の声を上げ、大きく翼を広げて宙へ舞い上がる。

 生い茂る木々の枝や葉を突き抜け、森の上空へ出た頃には、すでに雨も雷も治まっていた。

 低い雲が、ゴウゴウと唸る風に身を任せて流れていく。

 手傷を負ったウルを庇うように、片手を風避けにしながら、南へと南下するヴァルザック。

『ウルの傷はどうだ?』

 止血をしようと、傷を手で押さえていたラウラが、小さく首を振った。

「……ちゃんと治療しないとダメ…。
 傷はそんなに深くないけど、血が止まらないの……」

 弱々しく答えるラウラ。

『なら、やはりオズモールへ行くか…。あの地の空気が傷に障らないと良いが……』

 ヴァルザックがそう言い終えるか否か、ウルが言った。

「……ヴァル、グレイクレイまでは、急ぐとどのくらいで着ける……?」

 ウルの言葉に、驚いた顔でラウラが口を挟む。

「まさか、このまま行く気なの?!」

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