「ウル、もうそれしかねぇよッ!」

 そう言い放つと同時に、ヴァルザックの瞳孔が縦に割れるように変わる。

 皮膚も、人間のソレから鈍い光沢を放つ爬虫類に似たものへと変わっていく。

 身体が全体的に青みを帯び、急速に巨大化していった。

 変化に要した時間は、十秒程度。
 見上げる程の大きさとなったヴァルザックは、翼を広げると、空に向かって咆哮を上げた。

 グルルルルォァァアアァァッッ!!

 その声は、先ほどのオーク達の威嚇の声を遙かに凌ぎ、動揺を与える。

 グウゥゥゥゥ………

 低い唸り声を発しながら、オーク達を目で牽制するヴァルザック。

「…ヴァ…ル……?
 え…? え……? これ…ど、どういう事なの…? これ…」

 突然目の前に姿を見せたブルードラゴンに、驚きと混乱のあまり上手く言葉が出て来ないラウラ。

『ウル、ラウラ、乗れ』

 片手を地面に付け、手のひらに乗るように告げるブルードラゴン。

「えぇ…ッ?! ほ、本物のドラゴン…なの…?!」

 呟いた時、街道の前方にいたオーク達の内一匹が、半ば放心状態でドラゴンを見上げるラウラの背後から襲いかかってきた。

「ラウラッ!」

 咄嗟に、ウルがラウラを突き飛ばす。
 オークの爪はラウラを逸れ、ウルの左肩を浅く薙(な)いだ。

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