出発をしてから四時間。
 街道は平野に入り、道の登り下りも無く安定した速度で進めるようになったが、静かな道と違い、空には雷鳴が轟き始めた。

「うわ……ホントに雨降りそうだし…」

 呟いたラウラの声に、胸を張りつつヴァルザックが答える。

「だろー? 俺の天気予報って結構当たるんだぜ」

「今は当たらんでよろしい」

 間髪入れず突っ込んだラウラの言葉に、シュンと肩を落として馬の背に「の」の時を書くヴァルザック。

 ─お前、本当にドラゴンか…?

 はぁ…と小さく首を振るウル。

「それより、どうするの? 今にも降りそうよ? 雨宿り出来そうな所も無いし…」

 不安気な表情をウルに向けるラウラ。

 空を振り仰ぐと、少し前までは白く高くあった雲が、今は厚みを持ち暗い影を落としながら低い所を流れている。

 確かに、いつ降り出してもおかしくない空模様だ。

「……おい、ウル…。あれ……」

 不意に耳に届いたヴァルザックの声に視線を落とすと、街道の前方に黒い塊がある事に気付く。

 ヴァルザックに視線を移すと、彼も「分からない」と言うように肩を竦ませた。

 馬を慎重に進ませる中、同じように塊に目を向けていたラウラが、いち早くその正体に気付き口を開く。

「犬…だわ。野犬かなぁ……?」

 ─…犬?

 もう一度、目を凝らして見る。

 確かに、言われてみれば犬に見えなくもない。

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