─ヴァルザックだ…ッ!
すぐに、ウルはその影の正体に気付く。
だが、口には出せない。
「あれ……ドラゴンよね…? 蒼いドラゴン…。私、村に居た時に討伐を依頼されたのよ…どうしよう」
ラウラの言葉にギョッとしつつも、平静を保った表情でウルが言った。
「俺が様子を見に行くよ。ラウラはここにいろ」
ウルの言葉に、間髪入れずラウラが意義を唱える。
「バカ言わないでッ! ドラゴンなのよ?
一人で行ってどうするの! 戦えもしないのに、何かあったらどうするのよ!」
ラウラの言い分はもっともだ。
もしあれがヴァルザックでなかったら、ウルの命は間違いなく危険に晒(さら)されるだろう。
だが、ウルにはあれがヴァルザックだと言う確信に似た思いがあった。
もともと、ヴァルザックに出会う前からウルにはドラゴンに対する恐怖心があまり無い。
「一緒に行って二人とも危険な目に合うよりはマシだろ? ここで待ってるんだ」
「でも……ッ!」
尚も食い下がろうとするラウラを「いいから」となだめ、ウルは影の降りた方へ歩き出した。
ようやく、ヴァルザックに会える。
そう思うと、自然に足取りが軽くなる。
所々に生える木々の合間を縫うように進むウルの視界が、突然開ける。
そこには、広い草原の上で大きく翼を広げる蒼いドラゴンがいた。
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