翌日の朝、ウルの熱がすっかり下がったことを確認した医者は、ウルに旅に出ることを許可した。
「熱が下がったからって、無理はしちゃダメよ? 必ず毎食前に薬を飲むこと。わかった?」
馬に跨(またが)り、手綱に手を伸ばすウルに医者が念を押す。
「あぁ、分かってる」
丁度そう答えた時、遠くからラウラが馬に乗って駆けて来た。
「おまたせッ! 馬なんて久々に乗るわ」
笑顔でそう言うラウラに、同じく笑顔で返すウル。
「行こうか」
ウルのかけた声に小さく頷くと、ラウラは馬の頭の向きを街道に向け、手綱を打った。ウルもラウラを追うように馬を走らせる。
「気を付けてねッ!」
走り去るウル達の背に声を投げ、医者とエプロンの女性はウル達の姿が見えなくなるまで手を降り続けた。
街道は、時折山道に入ったり、谷沿いに延びていたりと、険しかった。
先日の雨で土砂が崩れたのか、迂回路を探す事を余儀なくされた所もあった。
馬に乗って行けないような急な傾斜もあったりと、旅は思うように進まない。
村を発(た)ってから、三日が過ぎようとしていた時、苛立つウルの耳にラウラの声が響いた。
「ウルッ! ねぇ、見てあれッ!」
辺りの木々に朱色の影が落ち始めた頃。
ラウラが指さす方に目を向けると、そこにはまだその区間だけ青空が広がっているような、真っ青な影が空から地面に降下して行くのが見えた。
.

