「グレイクレイに行けば…何か分かるだろうか……」
不安の色を滲ませた男、ウルの声に医者は一言だけ告げた。
「成さなければ、何も成せないわ」
ウルの顔を覗き込む医者の顔はどこまでも優しくて、ウルは小さく頷いたまま、顔を上げることが出来なかった。
─それもそうだな……。俺が俺である確信が、今は一番欲しい。
「ちゃんと、ご飯食べてね?」
顔を上げるのと同時に、医者がウルに告げた。
「……あの…」
小さく発した声に、扉まで歩いていた医者が振り返る。
「ん?」
「ここから、そのグレイクレイまでは、どれくらいで着けるんだ?」
んー…と、顎に片手を当てながら少し考えて答える。
「そうね…歩いて行くなら早くて一ヶ月……それでも、最小限の休息で…ね。馬を使えばもう少し早く行けるわ。
その、ホズからグレイクレイに行った時は、ワイバーンを使っ…」
言って、途中で口を噤(つぐ)む。
ウルの表情が強ばった。
彼の所に、今ワイバーンはいないのだ。
「まぁ、馬を使えば半月前後で着くわ。
私の馬を使いなさい」
気を取り直してそう言うと、医者は部屋を出て行った。
医者を見送った後、申し訳ない程度に付けられた窓から外へ、視線を飛ばす。
.

