「私は…その時キスティンの看病で手が放せなくて、あなたとはあまり話せなかったけど……。
その時に必要だった薬草は、グレイクレイの川辺にしか生息しない物だったわ」
ゆっくりと思い出しながら、出来るだけ詳しく説明しようとしてくれる医者に、ただじっと視線を向ける男。
「川辺と言っても、グレイクレイは水の街で、その薬草は群生すると言っても、ほんの一ヶ所にしか生えない薬草だったの」
医者は、テーブルの上に並べられた器を一つ取ると、「食べながら聞きなさい」と言うように男に渡しながら続けた。
「とても、あんな広い川を探して戻ってこれるものじゃなかった。それでも、あなたは薬草を探しに行ったわ。そして信じられないことに、その日の内に薬草を手にして戻ってきた」
ふぅ…と小さく息を付き、男を見て微笑んだ。
「グレイクレイに知り合いがいたのよ。多分だけど……。実際、あなたは薬草と一緒に一人の女の子を連れてきたもの」
男は、食事をするのも忘れて、医者を見つめた。
─グレイクレイという所に、俺を知る人物が居る……ッ?
「そ…れは…? その人はどんな人だ?
名前は……?」
すがるように問う男の背を軽くトントンと叩きながらなだめる医者。
「直接聞いたわけではないけど、キスティンは彼女を「レナ」と呼んでたと思うわ。
…小声だったから、定かではないけど」
申し訳なさそうに、ほんの少し目を伏せながら言う。
─俺の名前は……ウルか…。
思い、僅かに瞑目する。
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