「解熱の薬を打っとくわね。熱が下がれば少し楽になるわ」
男の右腕を持ち、注射器の針を当てる。
痛みを感じる間もなくそれを腕の中に刺し込み、点滴のチューブに繋いでいく。
医者が男に点滴を打つ間に食事の用意を終わらせたエプロンの女性が部屋を出る。
点滴の落下速度を調整しながら、不意に医者が言った。
「今日は一人で来たの?」
何の事を言ったのか、一瞬理解出来なかった男は、怪訝そうな顔で医者を見る。
医者は、少し苦笑し「覚えてないか…」と呟いた。
─……まさか……。
「あんた…俺を知ってるのか…?」
驚きに目を大きく広げ、男は医者に尋ねた。
「ホズで会ったわよ? キスティンって言う子が毒で倒れた時、私が看たじゃない。
…あなた、ウル君でしょう?
薬草持ってくるから調合してくれって。そんな事言う人は初めてだったから、しっかり覚えてるわ」
若さって強さよね。
そう言いながら笑う医者の腕を、男は無造作に掴む。
驚いた顔で男を見る医者に再び尋ねた。
「それは、いつの話だ? そのキスティンって、どんな人なんだ? 俺、どこから来たとか言っていたか?」
突然の質問に、医者の脳裏に浮かぶ一つの答え。
「……あなた、覚えてないの…?」
視線を落とし、小さく頷く男の顔を覗き込むように、身を屈める。
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