「記憶喪失?! 大変じゃないのッ!
あ、だから早く追い付きたかったのね。やっぱり人手は多い方が良いわよ」
どうやら、完全に付いて行く事に決めたらしいラウラは、男を支えて森を抜け、村へと入る。真っ直ぐ診療所へ行くと、扉を軽くノックした。
「はい。開いてますよ」
中から女性の声。
扉をくぐり、室内に入ると、様々な薬草を煎じる独特な匂いが鼻を突く。
奥の扉から、白衣を纏(まと)った女性が姿を現した。
「先生、この人ずっと雨に打たれてたみたいで、熱があるの。多分、風邪だと思うんだけど……。
この人、大切な用事があって、出来るだけ早くこの村を出たいみたいなんだけど…何とかならない?」
女性の医者は、男の額に貼られた薬草を取り除き、手を当てる。
次いで、男に口を開けさせ、喉を見る。
「うん。単なる風邪ね。食欲はどう?
お腹、空いてる?」
問われ、男は小さく頷いた。
「風邪は、食事をして、汗を出して寝るのが一番の療法よ。そして、無理な運動はしない事ッ! まぁ、旅はせめて熱が下がってからね」
そう言うと、奥の部屋へと男を連れて行く。ラウラもその後から付き添った。
「今日一日、様子を見ましょう。今日はここに寝て。明日、熱が下がってれば、旅に出ても良いわ」
ベッドが一つと、小さなテーブル、それに似合ったイスが置かれているだけの質素極まりない病室。
そのベッドに横たわる男の隣にラウラがイスを持ってきて座った。
.

