ドラゴンが直接村に何か被害を与えたわけではない。
 だが、群がるモンスターを物ともせずに蹴散らすブルードラゴンが、いつ村に被害を及ぼすか……、不安になった村人がラウラに討伐を依頼したのだ。

 ドラゴンと戦うのは初めてだ。手に持った綺麗な装飾が施されている弓の曲線部を指でなぞる。

 次いで、矢筒に手を伸ばした。

 矢先に毒を仕込んだ¨毒矢¨。
 油を矢先に染み込ませ、火を灯して射る¨火矢¨。
 矢先が聖なる力を込めた銀で作られている¨銀矢¨。
 矢先が鋼鉄で作られ、たとえ刺さらなくても当たるだけで大きなダメージを与える事が出来る¨鋼鉄の矢¨。
 矢先にオーブの欠片を仕込み属性を付ける¨属性の矢¨。

 数ある矢の内、銀矢と火矢を手に取る。

 ドラゴンは元々闇に属するモンスター。シルバードラゴンやゴールドドラゴンのような聖属性を持つ特殊なドラゴンでない限り、銀矢は効果的だろう。

 さらに言えばここは北国。

 氷や水属性に強くても、炎や火属性には弱いはず。

 矢筒に入る矢の本数は三十本。この三十本が尽きる前に倒さなければ。

 少しだけ瞑目し、気持ちを集中させる。

 ─大丈夫。今までだって何とかやってこれたんだから。

 小さく息を吐くと、二つの矢筒を肩に担ぎ、ラウラは家を出ていった───。

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