目が覚めたのは、瓦礫の中。

 最初は夜だと思ったが、遠くから聞こえ続ける小鳥達のさえずりに、それが瓦礫の隙間に閉じこめられて光が届いていないからだと気づく。

 ─……ダメだ……体が動かないな……。

 少し動かすだけで体中からズキズキと痛みが伝わる。

 ─………参ったな……。

 何故こうなっているのかが全く分からない。俺は何故ここにいる……?

 思いだそうとするが、体中を走る痛みで遮られて思い出せない。

 自分の名前すら思い出せない……。

 痛みを和らげようと深くため息を付く。

 ─さぁ、どうやってここを出ようか…。

 思案するが、瓦礫は大きくて持ち上がらない。それどころか、瓦礫に手を添えようと動かすだけで叫びたくなるほどの激痛が走る。

 以前は魔法を使い、瓦礫を押しのけることも可能だっただろう。だが、今は魔法の使い方も分からない。

「誰か……ッ! 誰かいないかッ?!」

 声に答えるのは、風の吹き抜ける音。

 ─……くそッ!
 またこんな絶望的展開かよ…ッ!

 そう思って、ふと思い返す。

 ─また? 前もこんなことがあったか?

 思いだそうとするが、分からない。

 ただ、誰かに会いたいと言う思いだけ。誰に会いたいのかすら分からない。

 どうしようもない状況に、何度目かのため息を落とした。

.