翌朝、空にまだいくつかの星が残る中、ウル達は出発した。

 街道に沿い、昨夜見た時は真っ暗でよく見えなかった森の中へと入る。

 今も若干暗めではあるが、森の中に木霊する小鳥の鳴き声が爽やかな印象を醸し出していた。

「この森を半日ほど行けば、ザイルを見渡せる丘の反対側に出られます。その丘を越えれば、ザイルは目の前ですよ」

 その言葉に、ヴァルザックが「ふむ…」と相づちを打つ。

「空から行けば、昨夜の内に着けたんじゃないか?」

 そう言うヴァルザックに、レナが苦笑を浮かべる。

 徒歩で行こうと言い出したのはレナだ。

 少しでも長くウルと一緒に居たいと思う気持ちがあったのも確かだが、もう一つ理由がある。

「以前のウルさんは、よく丘の上から町を見ていたと聞いています。歩いて行けば、ちょうど通り道だし何か思い出せるかなと思って……」

 なるほどな、と頷くヴァルザック。
 その隣で、ラーマも思い出したように口を開いた。

「そう言えば、我とウルが初めてゆっくりと言葉を交わしたのも、丘の上だったな」

「そうだったのか。俺、よっぽど丘の上が好きなんだな」

 ウルが、少し苦笑を浮かべながら呟く。

 その様子を、レナは楽しげな、だがどこか悲しげな表情で見つめていた。

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