十数分の飛行後、来た時よりも幾分早くグレイクレイに帰り着くことが出来た。

 昼間の喧騒からはまるで想像がつかないほど静まり返る街の中を歩き、とりあえず中心部から少し外れた公園に向かう。

 その途中で、レナが不意に足を止めた。

「……レナ? どうしたの?」

 キスティンが振り返り、レナに近づきながら声をかける。

 レナは一度だけ俯き、深く深呼吸をして顔を上げると、静かに歌を歌い始めた。



 逢いたくて 逢えなくて

 手を伸ばしたら消えて

 この景色霞んで見えたとしても

 あなたとの想い出は

 決して色褪せない

 だから星に願うの


 また逢えますように……──



 静かに響く音色は、ウルの心に鈍い衝撃を与えた。

「…そ…の…、歌だ…ッ!
 レナ、その歌をどこで……ッ?!」

 掴みかかるような勢いでレナの肩を揺するウルに、視線を向けるレナ。

「私たちの友人が、毎日のように丘の上で歌っている歌です」

「………お……か……?」

 掠れたウルの声が、レナの心に痛みを与える。

 だが、レナは表情を変えることなく、小さな声で言った。

「ザイルの街を見渡せる丘です。
 ……ご存知ですよね…?」

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