「……あれ? キスティン? レナ?」

 先ほどまで放っていた物々しい殺気もどこへやら、再び聞こえてきたのは素っ頓狂な声。

「な…何でクレイグがここにいるの?」

 すっかり気の抜けたキスティンが、問いかける。

「何で…って、キスティンとレナとラーマが見かけない男二人とどっか行って戻ってこないって門番がいうからさぁ。追いかけてきたんだ。まぁ、ラーマがいるなら大丈夫だろうと思ってたけど。
 ってか暗くて全く見えないな。三人居る気がしたけど、気のせい?」

 ─……気がした? 気配は完全に消したつもりだし……まさかな…。

 どうやらこの声の主はキスティンとレナの知り合いのようだ。ウルの体からも、ようやく緊張が解ける。

「三人目は俺だな。多分だが、見かけない男二人は、俺とヴァルのことだろ」

「そうですね」

「そういえば、マーロウ君はグレイクレイに来たこと無かったわよね?」

「キスティン、ウルさんは二度ほど来たことがあるのよ」

「え? そうなの?」

「……ちょ…ッ! えッ? 今、ウルとかマーロウとか言った……? って、さっきの声……まさか…ほ、本物か……ッ?」

 暗闇の中で発した男の声には、見えなくてもはっきりと分かるほどの驚きの色が篭もっていた。

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