「…マーロウ君、何で明かり消しちゃったの? こんなに暗くちゃ、何か来ても分からないわ……」

 不安を隠しきれない様子のキスティンが小声でウルに言う。

「明かりを付けていたら、逆に俺達がここにいるのを知らせることになる……。
 相手が動けば必ず「音」が出るはずだ。どんなに微かでもな……」

 ウルの言葉に、確かに…と押し黙るキスティン。

 そして、その音は静かに静かに、どこかの通路から反響して聞こえてきた。

 ……ヒタ………ペタ………ペタ………

 まるで裸足で歩いているような、一対の足音。

 ペタ………ヒタ…………───

 目を閉じ、音に集中して位置を確かめようとしたウルの耳から、足音が消えた。

 レナかキスティンのどちらかの手が、ウルの服の裾をギュッと握る。

 この暗闇のどこかに「何か」がいる。

 その「何か」は静止しているらしく、音が何も聞こえない。

 ─…まさか、幻聴か……?

 思わずそう思ってしまうほどの時間が流れた頃、聞こえてきた「音」に、ウル達は驚きを隠せなかった。

「……おい、何かいるんだろ?
 バレてるぞ。出てこい」

 それは紛れもなく人間のそれで、それを聞いたキスティンとレナが弾かれたように立ち上がる気配がウルに伝わる。

「クレイグー?!」

「クレイグさんッ?!」

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