ヴァルザックとラーマが姿をけしてからしばらく。

 その音は、突然洞窟の中を貫いた。

 ギュゴァォォォッッ

 何の前触れも無く響いた轟音に、思わず体がビクンッと跳ねる。

 その音の余韻が消え、再び落ちる異様な静寂。

「……な、何だったの……?
 今の音……」

 掠れたキスティンの声が空洞に響く。

「さ、さぁ……? 何だろう……。
 もしかして…「水中の悪魔」……?」

 返すレナの声に、誰も答えることが出来なかった。

 ─…水中の悪魔…かどうかは別として、この洞窟に俺達以外の何かがいるのは間違いないみたいだな……。

 洞窟に踏み入れた時から、ウルはそんな予感がしていた。

 音を立てずに立ち上がると、ゆっくりと灯りに近付き、揺れる魔力の光を自分の魔力で相殺し、打ち消すウル。

 辺りから一切の光が消え、真の闇に包まれた。

 何も見えない暗闇の中、ウルはレナ達の所へ戻り、二人を連れて壁側へ移動する。

 あの音が何の音であれ、恐らくラーマのものでもヴァルザックのものでも無いのは確かだろう。自分たち以外の生き物がこの洞窟のどこかにいるのだ。

 ウルは、そう確信した。

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