「……水中の悪魔……?」
問い返したのは、ウル。
ウルに向かい、キスティンは頷いた。
「ある日突然、泉に行った人達が戻らなくなったの。それどころか捜索に行った人達もね。「記憶の泉」に近付く人達はみんな行方不明になったのよ。
記憶の泉に悪魔が住み着いたと言われ、いつしか「水中の悪魔」と呼ばれるようになったの」
一気に説明をするキスティンに、レナは驚いた表情を向ける。
記憶の泉について調べたのは自分だけだと思っていた。
キスティンは、特に泉に頼らなければならない過去など無いはずだ。
なら、調べてくれたのは、私の為……?
レナの視線に気付いたキスティンが、照れくさそうな笑顔を作る。
胸がいっぱいで、涙が溢れそうになる。
だが、レナはそれを必死に堪えた。
涙なんか見せられない。
ただでさえ記憶をなくして不安な思いをしているウルに、心配などかけられない。
レナは、深く息を吸い込むと俯きがちになっていた顔を上げた。
「ウルさん、どうなさいますか?
記憶の泉に行くには、危険が伴うようですが、それでも行きますか?」
問いかけるレナに視線を向けて、僅かに考えてから、ウルはゆっくりと頷いた。
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