それから、人間が動けるまで回復したのは二週間後。
 もっと遅いかと思っていたが、薬草の効き目は絶大だったようだ。

「明日、俺用事で居ねぇから。今日辺りお前を町まで連れてってやるよ」

 そう良いながら、朝食の片づけをする。

 料理は全てヴァルザックが作った。
 以外と料理好きなのか、全部キノコを中心とした料理だったが、人間は飽きることなく食べた。

「そうか、じゃ今日でお別れなんだな」

 返ってきた言葉はそれだけ。
 僅かな寂しさがこみ上げるが、それを顔に出さず、ヴァルザックは軽い口調で言った。

「あぁ、ヒナを巣立たせる親の心境だ。やっと子守りから解放されるぜ」

「なんだそりゃ。お前、鳥じゃなくてトカゲだろうが」

 返ってきた言葉に、何故か嬉しく思う。
 この二週間、ヴァルザックは決して暇ではなかった。
 朝、キノコを使って料理を作り、人間に付ける薬草を取りに行き、巻き付ける葉を変え、昼食を作り、夜と翌日の朝の為にキノコを採りに行き、血の匂いに誘われてきたモンスターを撃退し、夕食を作り、朝を迎える。

 こんなに長い一日を送ったのは何年振りだろう。人間と、気楽に会話をしたのは何十年振りだろう。


 だが、それも今日で終わる。再び、孤独な生活が始まる。




「看病してもらってその言い草かよ」

 人間の軽口に小さく愚痴た。

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