Mr.キューピッド



あの2人を逢わせるには、どっちかが動くしかない。
売店の畑村さんが彼女の病室へ行くのはおかしいし、吉田さんが売店まで行くのは辛いだろうし……だけど、吉田さんが行かないと自然に逢わせることが出来ない。
ここは吉田さんに動いてもらうしかないけれど……

「良い『シナリオ』が思い浮かばない……」

『シナリオ』っていうのはキューピッドの能力の1つ。結ばれる運命の人達に出逢いの1ページを与えることが出来る力なんだ。
特殊なインクが入ってるペンで、紙にこれから起きる出来事を書くと、紙に書かれた出来事は現実のものとなって、それがきっかけとなって結ばれるチャンスを与える。
『シナリオ』によっては鎖に変わることはない場合があるから、慎重に考えないとならない。
俺は吉田さんの顔を見上げて、彼女がどんな人なのかを探った。
まず吉田さんが今読んでいる本は有名な作家の新作推理小説。結構知的な人なのかもしれない。
綺麗好きなのか、棚にある本はきっちりと大きさ順に並べられていた。

「おいナナトー、」
「何ですか?」
「悩む場合は直球勝負にしとけ?」
「直球勝負、ですか……」

直球勝負かぁ……確かに俺達キューピッドの都合を考えるとそっちの方が良いんだろうけれど、

(彼らにとってはどうなんだろう?)

毎回思うことなんだ。彼ら人間にとって、この出逢いはこの先を決めるきっかけだ。だからいい加減にして良いものなのかなって……。
一生残るものにしてあげたいのが俺の気持ち。
何年経っても心に残るような出来事にしてあげたい。