「何でもないことはないでしょう?」

子供に言い聞かせるように言い、カワサキは顔をグッと近づける。
顔が赤らむのがわかる。

「いや……ホント、何でもないです。」

じっと見つめられて、顔が火照ってくる。
目を見ていられなくて、視線を外した。

クスッとカワサキが笑う声が聞こえた。
そっと視線を戻すと、カワサキの顔も手も、私から離れていた。

「ドキドキした?」

「……えっ?」

声がかすれて上手く話せない。

「顔、真っ赤。」

カワサキはクスクス笑っている。

「俺がレポート預かっておこうか?」

「でも……。」

「期限、昨日までだったんだろ?大丈夫、俺がなんとかしとくから。」

「いいんですか?」

「任せろ!」

そう言ってカワサキはニッと笑った。
八重歯がかわいい。


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