「中、入って待っときなよ。」

カワサキが研究室のドアを開きながら言う。

「いいんですか?」

「いいよ。」

「でも……レポート出しに来ただけだし。」

「いいって。」

カワサキの左手が伸び、私の右の手首を掴む。

それだけ。
たったそれだけのことなのに。

一気に上がる体温。
心臓がドキドキうるさい。

どうしちゃったの、私!?

「何?どうかした?」

突然、黙り込む私に、カワサキが尋ねる。

「いえ、何でもないです。」

ドアがパタンと音をたてて閉まる。
気がつくと私は、研究室の中に入っていた。


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