床を見つめながら廊下をツカツカ歩く。

もうイヤだ。何もかも。

私だって、人を好きになることくらいある……はず。

ただ、他の女の子たちと少し違うだけ。
嫉妬したり、そばにいてってワガママ言ったり、ケータイ覗き見したり……そんなことしない。
ってか、そういう気持ちがわいてこない、全然。

恋とか愛とか……わかんない。

「若菜っ!」

浩実が私の腕を引っ張ったが、少し遅かった。
私は歩くスピードを緩めないまま、誰かにぶつかった。

「ごめんなさい!」

イライラを隠せないまま、言葉だけで謝る。

「あっ!」

相手は何か、気づいたみたいだった。
そっと顔を上げると、見覚えのある八重歯が見えた。

「大丈夫?」

そこにいたのは、カワサキだった。


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