気まずい空気が流れる。

大志、ごめんね。
きっと、賭けに出たんだよね、最後の。

「大志、私さ、――」

「もう、いいよ。」

大志が私の顔を見つめながら言う。

「いいんだ、もう。本当はずっと前から気づいてた。若菜が俺のこと好きじゃないって。」

「ごめん……。」

私は、ただ謝ることしかできない。

「今まで、ありがとうね。俺に付き合ってくれて。」

「本当、ごめん。」

大志が立ち上がり、私に背を向ける。
寂しげなその背中に、私は思わず呼びかけた。

「大志!」

振り返った大志の顔は、影になっていてよく見えない。

「私、大志のこと、好きだったよ。」

「ありがとう。」

小さな声で大志は言うと、遠ざかっていった。

「私こそ、ありがと。」

伝えきれなかった気持ちを、私は呟いた。


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