「ねえ、桜嗣」

「ん?」

莉緒が家事の手を止めて、顔をあげた

「どうして紫音さんとは男女の関係にならなかったの?」

「はい?」

突然の莉緒の質問に、俺の思考がストップした

「だって、私と出会う前の桜嗣は女に見境のない人だったでしょ?」

「ひどい言い方だなぁ」

俺は首を掻いた

まあ、女遊びが激しかったのは認めるけど、見境がなかったわけではないぞ

遊びできちんと別れられる女とだけだ

本気に切り替わってしまうような女には手を出してない

「だって紫音さんは綺麗だし」

「どこが?」

「え? 綺麗じゃない
スタイルだって良いよ」

「女に見えない」

「ええ?」

俺の言葉に莉緒が驚いた声を出した

「女性だよ」

「まあ、そうだけど
何て言うかなぁ……性別は女なんだろうけど、根本が女じゃねえんだよな」

「桜嗣の言っている意味がわからないよ」

「莉緒からは『女』を感じる
だが、あいつから『女』を感じない
失礼な言い方じゃないぞ
そう言うんじゃないくて、『男』とか『女』って枠を超えて、人間なんだよな
親友になれるタイプって言うんかな?
あいつなら俺の裏を知っても、友達でいてくれるって雰囲気がある」

「私は?」

莉緒が俺の隣に座ってきた

「気になるか?」

「うん」

俺は莉緒の肩を抱きしめた

「無性に抱きてぇ」

「……えっ? ちょ…っと、夕飯は?」

俺はソファに莉緒を押し倒した