改札を抜けてから、煙草を吸おうとポケットに手を突っ込む。
いつもはポケットにあるはずなのに入ってない。
カバンの中を探そうとしたその時、

「ねぇ!そこのお兄さん!!」

周りに自分以外人が居ないことはわかっている。

おそらく自分のことだろう。

そんなことを考えながら振り返ってみる。

そこにはさっき、ベンチに座っていた女子高生が立っている。

さっきは俯いていて見えなかった顔が今はハッキリ見える。

涼香…

頭の中を昔の記憶が駆け巡る。
心臓の鼓動する音が聞こえる。

そんなはずはない。
涼香はもう居ない。
そんなはずはないのに…

目の前に居るこの女子高生は涼香そのものだ。
目頭が熱くなる。
涙が流れそうになる。
胸が苦しくなる。