問題は夜だ。夜の電車は人がまばらにしか居ないので、時間が長く感じる。
色々考える。
これからの事、今の生活。
いや、そんなことは考えることの1割にも満たない。
考えるのは、いや思い出すのは1つのことだけだ。高校2年生のあの夏。何度も、何度も、同じ年の、同じ夏を思い出す。
思い出しては胸が苦しくなる。
それを、もう何年も、何度も、繰り返している。

今日も仕事が遅くなった。乗り慣れた最終電車。
電車に乗ってから30分。住んでいる町まではあと1時間もある。また考えだす。
寝て時間を潰そうと思ってもなかなか寝つけない。
煙草が吸いたい。
外の空気が吸いたい。明日の仕事は…なんて、そんな事を考えて、昔の事を思い出さないようにする。
子供の頃から見慣れた景色が目にはいる。
もう駅は近い。
電車がけたたましい音とともにホームに入る。今ではこの耳障りな音が好きになっている。電車のドアが開き、みんな降りていく。いつも最後に降りることにしている。ホームに降りると外は少し寒いことに気付く。ホームのベンチに珍しく人が座っている。ここら辺じゃ見掛けない制服の女子高生。俯いていて顔は見えない。
気にせずに改札を抜ける。