「そうだけど…………そうだよな…もう忘れた方がいいのかな…しょうがないな」

「…それはお前次第だ。…ただな、お前の悪いとこはすぐに【しょうがない】って割りきっちまうところだ。しょうがないで片付けてばっかりじゃ、自分も傷付かない分、大事なもんは何も手に入らないよ。」

「…」

「俺がお前に言える事は、ゲームはもう始まってるってことだ。ゲームを続けるか続けないかはお前次第だよ」

「…」

返事が出来なかった。遠藤との付き合いは高校時代からだ。
大学は違ったが、またこの会社で一緒になった。
多分、自分の事を一番良く分かってくれている人物だろう。



今日は仕事が早めに終わり、急いで駅まで行って電車に飛び乗った。

おそらく、帰っても彼女は居ないだろう。
そんなことわかっているのに少ない可能性でも、そこに賭けたい自分がいた。
彼女が居たら何を話そう。
どう接すればいいのか。


帰り際に遠藤が言った一言が胸に響く。

「その子と涼香ちゃんを重ねんな。どうあがいても、その子は涼香ちゃんじゃないんだから」


あいつは涼香じゃない。そんなことわかってるって。でも、頭も体も…勝手に反応しちまうんだよ。