いつもの電車。

しかし、いつもより遅い時間帯。

いつもの主婦も男子高校生も女子高生も居ない。

会社には遅刻すると電話をいれてある。
働きだして初めての遅刻だ。

いつもは目覚まし時計をかけているが、昨日はかけ忘れていた。
しかし、最近は目覚ましが鳴る前に目が覚めていた。
あんなにぐっすり眠ったのは何年振りだろう。
昨日は色々あって疲れたんだろう…


桜香が居る事で心が落ち着いている自分に気付いてないわけではなかった。

しかし、今日帰ったら彼女はもう居ないだろう。

素直に言えなかったが、桜香にこのまま居てほしいと思ったのは確かだ。
しかし、彼女にも彼女の生活がある。

自分のワガママで彼女の生活を変えるのにも気がひけたし、なによりも桜香に涼香を重ねている自分が居るのも確かだった。

それが、何よりもひっかかっていた。

涼香はもう居ない。
それはわかっているのに桜香に何もかもを求めてしまいそうな自分が嫌だった。

「援助交際」

彼女はいつもあんなことをして生活しているのだろうか…

そう考えると心の中がモヤモヤした。

「何なんだ俺は…」

そう呟いて眠りについた。