あたしが美島プラネタリウムに勤め出したのは
今からおよそ5年前。

彼方と出会ったのも、ちょうどその頃だった。




特別、天体に興味があったって訳じゃないあたしが
ここに働く事になったきっかけは

高校と同時に就職した飲食店を辞めたからだ。


何故辞めたかっていうのは
話せば長くなるので、ここは…省略。



暇を持て余していたあたしは
特にする事もない毎日を送っていて。

所謂、フリーターをしていた。



そこで、ふと訪れたショッピングモールの隣に
こじんまりとした看板に目をやれば

『美島プラネタリウム』という文字が、あたしの思考を停止させた。



「…プラネタ、リウム?」


こんな所にプラネタリウムがあるなんて
この時初めて知ったあたし。



真夏の炎天下、街中。
コンクリートからは、太陽の光を存分に吸収した熱があたしの頬を撫でて。

のぼせそうな暑さに加え、とにかく暇だったあたしは
迷う事なく、その自動扉をくぐり抜けた。


夏休み、というだけあり
館内は子供連れの家族で溢れていた。


その中で、女一人で一番前の席を陣取っていたあたしは
おそらく、相当浮いていた事だろう。

でも、そこが一番
クーラーの風が当たりやすい場所だったのだ。