ドーム内に入り、扉が閉まると彼方はあたしの手を離した。


それを見計らって
あたしはすかさず彼方へ詰め寄る。



「彼方、どうゆう事!?あたしは陽平と話す気なんてないから!」

そうまくし立てたあたしに
彼方はゆっくりと体をこちらへ向けた。

目が合った瞬間、キスの事が過ぎる。



思わず不自然に目線を床に下げると

「オリ。」

名前を呼ばれ、ビクっと肩が跳ね上がった。



彼方は真っ直ぐにあたしを見つめて言う。



「ちゃんと話して来い、アイツと。」


広いドームで
彼方の声が反響するようにあたしの耳へ届く。


その言葉に、あたしは震えた声で問い掛けた。



「何、言ってるの……?」

止まったはずの涙が目頭を熱くさせる。



「前に話したでしょ?あたしは、陽平に裏切られたんだよ!?」

「…わかってる。」

「じゃあ…何でそんな事…っ、」

零れ落ちそうになった涙が、言葉を詰まらせた。


わからない。

彼方がどうしたいのか
どうして、あたしにそんな事言うのか。


あたしは傷ついたんだよ?


知ってるくせに何でそんな事言うの?