「で?心当たりはねーの?」


静かになったドーム内に
カチャカチャと、機械をいじる音が鳴り響く。


あたしはモップの柄に両手を置いて、その上に顎を乗せながらやる気なく答えた。



「…あったら言わないでしょーが。」

「あ~、なるほど。」

「…ちょっと。何よ、その適当な返事!ちゃんと聞いてるー!?」

「聞いてるっつーの。」


うるせーなぁ、と
気怠そうに眉根にシワを寄せる、星野 彼方(ホシノ カナタ)。



一瞬、ギャグですか?と聞きたくなるような名前をしてるが
こう見えて天文学者を目指してるこの男。

色素の薄い伸ばしっぱなしの髪に、その整った横顔。

すらっとした身長に、その長い手足は輝星投映機に向けられていて。


見た目は今時で、とても天文学を学んでるとは思えない風貌だが
天体の事になると、目の色を変えて話し出す

所謂、天体バカだ。



「一等星が霞んでる!」とか言っちゃって
突然、投映機の修理をし始めちゃうんだから。




「ていうか、研究終わったの?」

「いや、まだ。」

「じゃあそんな事してる場合じゃないんじゃない?」

「ごもっとも。俺は忙しいの!だからオリの話聞いてる暇ねぇって訳~。」

「……あっそ。」



あー、もうやっぱりコイツに話すんじゃなかった!