7月7日、逢いたくて



あたしは冷静を装いながらも
高鳴る鼓動を押さえ、写真集をレジに打ち込んだ。


「…えっと、2500円です。」

「2500円ね。」


そう言いながら
彼、天塚さんはシンプルな黒の財布を覗き込む。


あたしは写真集を袋に入れ、未だに財布を探る彼に問い掛けた。



「…星、お好きなんですね?」

「ん~…好きって言っても、かじってる程度だけどね。」

「そうなんですか?」

「ああ。普段は至って普通のサラリーマン。」


はい、と
彼は2500円ちょうどをあたしに差し出す。


それを受け取ったあたしは、その時ある事に気が付いた。



…これ、



手に収まるそれに戸惑っていると


「気が向いたらでいいから。」

その言葉に
視線を上げれば、彼はすでに写真集を手に背を向けて行ってしまった後だった。



「あっ、あの…!」

呼び止める声も虚しく、彼は自動ドアの向こうへ消えてゆく。



あたしは彼の後ろ姿を見届け
手のひらに置かれた紙切れを、恐る恐る開いた。




“090-****-****  天塚 匡軌”




見た瞬間
本気で、腰が抜けるかと思った。