あたしは冷静を装いながらも
高鳴る鼓動を押さえ、写真集をレジに打ち込んだ。
「…えっと、2500円です。」
「2500円ね。」
そう言いながら
彼、天塚さんはシンプルな黒の財布を覗き込む。
あたしは写真集を袋に入れ、未だに財布を探る彼に問い掛けた。
「…星、お好きなんですね?」
「ん~…好きって言っても、かじってる程度だけどね。」
「そうなんですか?」
「ああ。普段は至って普通のサラリーマン。」
はい、と
彼は2500円ちょうどをあたしに差し出す。
それを受け取ったあたしは、その時ある事に気が付いた。
…これ、
手に収まるそれに戸惑っていると
「気が向いたらでいいから。」
その言葉に
視線を上げれば、彼はすでに写真集を手に背を向けて行ってしまった後だった。
「あっ、あの…!」
呼び止める声も虚しく、彼は自動ドアの向こうへ消えてゆく。
あたしは彼の後ろ姿を見届け
手のひらに置かれた紙切れを、恐る恐る開いた。
“090-****-**** 天塚 匡軌”
見た瞬間
本気で、腰が抜けるかと思った。

