いや、元はと言えば
目指してた事自体、ありえない話なのだ。


勉強なんて嫌いだったし
数学なんて、それこそ虫唾が走る。

あたしの頭じゃ、到底無理だと思い知らされた。



でも、やっぱり
星を見るのは好きで。

見上げた空で霞む東京の星じゃ
あたしはもう既に、満足出来ずにいた。



「館長っ!」


バタン!と扉を開け
投影機の点検をしていた館長の元へ駆け寄る。

その時のあたしときたら
相当必死の形相をしていたんだろう。


館長はあたしを見るなり
まん丸の眼鏡の奥の瞳を、パチクリさせて首を傾げた。



「どうしたんですか、そんな怖い顔をして…、」

「お願いしますっ!」

「んん?」


突然掴みかかるあたしにも
館長はいつだってその優しい笑顔を絶やさず、話を聞いてくれようとしてくれる。



「ここで、働かせて下さいっ!!!」



あたしが泣いた、あの時のように。




『またいつでもお越し下さい。』



館長の温かさは
星のように、あたしを優しい気持ちにしてくれるんだ。