夏が過ぎ、秋が通り抜けて
冬の真ん中…ちょうど、クリスマス前の出来事だった。


あたしはあれから
暇さえあれば、足繁くプラネタリウムに顔を出すようになった。

多い時は週に3日。

すると、否が応でも顔を覚えられるようになって。



「あ、織葉ちゃん!」


もはや、名前で呼ばれる程
常連になってしまったあたし。


「つぐみさん!もう体調大丈夫なんですか!?」

「うん、もう平気~。」

ごめんね心配かけて、と言いながら
つぐみさんは屈託のない笑顔で、ピースサインを向けて来る。




つぐみさんは、美人で有名な
美島プラネタリウム自慢の受付嬢。

ちなみに、ここの館長である美島 銀次郎の愛娘だ。



「も~、つぐみさんが居なかったから客足が遠のいた!って、みーんな言ってたんですよ?」

「あはは、そんな大袈裟なー。」

「本当ですってー!」


つい最近結婚したばかりのつぐみさんは
薬指に光るリングを見つめ、おもむろに呟いた。



「でも、本当に辞めなきゃいけないかも。」

「えっ!?な、何でですか!?」


ここ最近体調が悪い、と言っていたつぐみさん。



もしかして、何かしらの病気に?と
募ったあたしの不安を余所に、つぐみさんがニコっと笑って言ったのは。



「…ご懐妊、だって。」