「じゃあ、また明日な。」
夕暮れが、二人の影を長く伸ばす頃
あたしと神楽くんは駅前でいつものようにお別れ。
そう、神楽くんはこの後バイトなのだ。
弥生ちゃんの居る、あのカラオケ店で。
あたしもバイトの時は二人で一緒に行くけれど
残念ながら、今日のシフトにあたしは居ない。
というよりも
週に2回しか入れてないから、当たり前なんだけど…。
「…日和?」
「………、」
「ぷっ。何だよ、急に黙って。」
…急に、じゃないもん。
ぷぅ、っと口を尖らせるあたしは
きっと今、相当可愛くない顔してるだろう。
だけど、行って欲しくない。
本当はバイトなんか行かないで、ずっと一緒に居て欲しいのに。
そんな事言ったら
優しい神楽くんは、きっと一緒に居てくれる。
不安にさせないように、っていつも気にしてくれてるから。
わかってるのに、こんな気持ちになるあたしは我儘だ。
こうして黙っていたら
神楽くんが心配する、ちょっとだけでも時間を引き延ばせる。
なんて、ズルイ考え。

