「……り?日和ってば!」
「へっ!?」
「へ?じゃないっつーの!何度も呼んでんのにー!」
お得意のトリップですか?
そう言われ、あたしはぷぅっと頬を膨らませて言った。
「別に、得意じゃないもん。」
「あ、拗ねてる。可愛いー!」
「んもう!神楽くんのバカっ!!!」
ポカポカと神楽くんの腕を叩くと
下校途中の生徒達が、あたしたちを通り過ぎてゆく。
きっとあたしの顔は今、最高に真っ赤だろう。
それを隠すように
ふんっ、と神楽くんから顔を背けると
「嘘、嘘。すぐいじけるんだから。」
笑いを含んだ声があたしの耳元をくすぐった。
そして、カバンを持っていた手は
その大きな手に掴まれ、ドキンと高鳴った心臓に視線を神楽くんへ戻せば、ほら。
「はい、これで仲直り!」
な?と言われ
あたしはもう、何も言い返せなくなるの。
神楽くんは、いつもこうやって
あたしが嬉しい事をすんなりとやってのける。
でも、あたしの心臓はその度に壊れてしまいそうで。
“可愛い”って言われる事も
こうやって手を繋ぐ事も。
こうして、神楽くんの隣を歩く事も
あたしの心臓はいつまで経っても慣れてくれない。
きっと、あたしの心は
この先もずっと、神楽くんにドキドキするんだと思う。
神楽くんと一緒にいる限り、あたしは彼にときめかされてしまうんだ。

