そして、ふと思い出す感覚。
ああ、前にもこんな事があったなぁ。
神楽くんに片思いしてた頃
あたしはいつも神楽くんの言葉に一喜一憂して。
彼の一言一言に、泣いたり笑ったり。
もうダメだ、もう諦めよう
そう思っても
何度も引き戻されては、その度に好きになっていった。
付き合い始めても
あたしは変わらない。
神楽くんの言葉で不安になって
神楽くんの言葉によって、不安は消えてゆく。
そしてあたしはもっと、もっと
神楽くんを好きになるんだ。
「…うん、ごめんね。」
「うむ、素直でよろしい。」
そう言って
軽くあたしを抱きよせた神楽くんは
「でもまぁ、日和の言う通りだな。」
と笑った。
「今日の所は、真っ直ぐ帰ろ。」
「…神楽くん、」
「一緒に居るだけが全てじゃないもんな?」
「うんっ。」
笑う神楽くんに、あたしも笑顔を返す。
…よかった。
ちゃんと伝わった。
ありがとう、神楽くん。
あたし、神楽くんを好きになってよかった。

